第10章 11月『王子様の超越』
体育館に入ると、
既に劇はクライマックスで、
白雪姫が真ん中で横たわっていた。
「永田、時間は?」
「ピッタリでございます。
この後、さんが右側から
登場します。………どうぞ、こちらへ。」
永田さんが会場の端に
豪華なイスを2つ用意している。
「ああ。……一も座るか?」
「いや、座ると見にくいし……俺はいいや。」
会場は今までにない満席だ。
俺も聖帝は3年目だけど、
こんなに混んだことない。
「那智…僕は確かに模試で全国一位を
取った高等部の先輩を見てみたいとは言った。
だが、文化祭の劇を見たいとは言ってない。
それに、この程度ならば、中等部とも
変わらんだろう。」
「まぁまぁ、落ち着いてよ慧。
これから出てくるはずだからさ。
……先輩、まだかなぁ…。」
………中には中等部の制服の生徒もいる。
忍び込んでいるのだろうか。
「…………確かに人が多くて見にくいな。
椅子の高さを上げろ。」
「かしこまりました。」
ウイーン、と音がして、立っている俺の横に
翼の顔が見える。
あの豪華な椅子、そんな事もできるのか。
「『……おお、なんて美しい姫なんだ。』」
「ん?あれ、じゃないか?」
椅子から目を離し、ステージを見ると、
が右側からふわりと躍り出た。
「わぁ………カッコイイ………。」
近くの女子がごくりと息を呑む音が聞こえる。
は髪をクルクル巻いていて、
顔は凛々しく、蒼い煌びやかな衣装を着ている
ライトはに照らされて、
まるでが主演のように見えた。
「…………フム、やはり
には青が似合う。」
翼が隣で満足そうに頷いた。
あの服、翼が作ったのか。
どうりで他の役の衣装よりも
派手だと思った。