第10章 11月『王子様の超越』
「……ぜぇ、はぁ、ただいまぁー。」
「あら悟郎君!どこ行ってたのよ。」
「……………………。」
悟郎に連れてこられたのは、
ClassXだった。
………悟郎の後ろに隠れたまま、教室に入る。
悟郎が僕が入ったのを確認して、
扉を閉めた。
教室は、喫茶店一色で、
テーブルクロスが綺麗に引いてあり
装飾の途中みたいだ。
「………あれ、その後ろにいるのって…」
「……ぜぇ、はぁ……っレイだよ。
連れてきたの………はぁ……。」
「……………………。」
南先生が悟郎の後に周り、
僕を見た。
いつもと格好が違う僕をマジマジと見ている。
「………これって、
悟郎君が前言ってた、
王子様役の君!?」
南先生が驚いた声を出した事で、
ClassXの生徒がみんな一気に
僕の方を振り向いた。
「わぁ……本当だ、カッコイイ……。」
「いつもと雰囲気全然違う……」
「まるで絵本から出てきたみたい……。」
「………………ッ。」
皆のヒソヒソと喋る声が聞こえてきて
また怖くなり、
悟郎の腕をギュッと掴む。
もう見られるのは、嫌だ………。
「………シーッ!センセ、ダメだよ!
ナイショで連れてきたんだから!!」
「そ、そうだったの?ごめんなさい。
………それにしても、どうして連れてきたの?」
「まぁ、ちょっと…色々あって………ね。
レイ、とりあえず着替えた方がいいよ。
その服目立つし。」
「……………。」
「キッチンの裏なら、誰もいないから
着替えれるよ。はい、服。
あ、あとメイク落としシート。」
「………………うん。」
悟郎から服とかその他もろもろを受け取って、
言われた通りキッチンの裏に入った。
「…………はぁ。」
誰もいない所に座り込んだ。
もう緊張は落ち着いているのに
僕の心は真っ暗で。
「…………もう…やだ…。」
それが、自分の不甲斐なさへの言葉なのか、
女子への不満なのかは分からなかった。
ただ、悲しくて、辛くて。
「………着替えよ。」
僕はそれを拭い去るように
着替えに集中した。