第10章 11月『王子様の超越』
「………………。」
いつもの格好に戻った僕が
こっそりとキッチンの裏から顔を出すと、
ちょうど兄さんと翼が戻ってくる所だった。
「…あ、。すれ違いかー、
惜しかったな。」
「用事のついでに体育館寄ったんだが
誰もいなくてな。ここにいたのか。」
「…………うん。」
僕がそう頷くと、兄さんが首を傾げる。
「……?どうした?
なんか変だぜ。」
「……そうかしら?
いつも通りに見えるけど。」
南先生がうーん、と悩みながら僕を見る。
その視線を避けるように目をそらした。
「………………。」
「いや、やっぱなんかおかしい。
。ほら、おいで。」
兄さんが近寄ってきて、手を差し伸べる。
僕がその手を取ると、頭を撫でてくれた。
なんだかホッとする。
少しだけ、気持ちが和らいだ。
「……、……。」
『兄、さん。』
「んー、?何かあったか?」
「………、……。」
『実は………、嫌な事が、あって。』
まだ言おうとしても、口が開かない。
ギュッと兄さんの腕を掴むと
兄さんが眉をひそめた。
「嫌な事?」
「………。」
僕が話そうとすると、悟郎が手を挙げた。
「あ、ゴロちゃん分かるから
ポペッと説明するね!」
「…ああ、頼む。無言のような瑞希語は
俺には分からんからな。」
翼が不満そうに呟いた。