第10章 11月『王子様の超越』
「……ひ、姫。……あの、こっち。」
僕が立ち尽くす姫の手を引いて、
定位置に連れていき、跪いた。
これを言えば……劇は終わりだ。
「『………僕と、結婚、してください。
共に、お城で…暮らしましょう。
僕だけの……プリンセス。』」
途切れ途切れではあったが、
僕が台詞そう言い終わる。
女子もやっと今の状況が飲み込めたらしい。
「『………はい、王子様。』」
我に返った女子は
しっかりと台詞を言った。
しかし真っ赤な顔で頷く女子の目は
やはり僕を見つめていた。
「『こうして、白雪姫は王子様と
いつまでも幸せに過ごしました。
めでたしめでたし。』」
なんとか乗り切った、と
最後にステージを見ると、
女子の目が僕の顔に
グサリグサリと刺さって痛い。
動物、動物といくら考えても
この視線だけは逃げられなかった。
「…………はぁ。」
早く裏に行きたいなと心から願いながら
最後に皆でお辞儀をしてステージを降りた。