第10章 11月『王子様の超越』
「「「キャアアアアアアアッ!!?」」」
直後、観客から悲鳴のような歓声が上がる。
「ーーーッ!?」
あまりの急な歓声に、
僕も思わず頭が真っ白になる。
迫り来る緊張と頭痛がいっぺんに来て
自分が何をしているかも
忘れかけそうになる。
下を見ると、女の子も固まっていて、
顔は真っ赤で、パクパクと口を動かしていた。
「…………、……くん……!?」
「…………………っ、」
そんな訳の分からない顔で見られても
僕だってこんな状況、訳が分からない。
おでこにキスをしただけで
こんなに戦慄が走るものなの?
兄さんはほぼ毎日僕にやってくるのに
どうして………?
一瞬だけステージに沈黙が流れる。
周りの小人役やナレーターも
心配そうにヒソヒソと話し始めた。
「『…お、王子が白雪姫にキスを落とすと、
なんと、白雪姫が目を覚ましたのです。』」
「『……し…っ白雪姫が生き返った!!』」
ナレーターも小人達も
慌てた様子で僕達を見る。
僕だって、頭の中では戦争状態だ。
「……………………ッ、……。」
僕はゆっくりと白雪姫から離れ、
次の台詞の定位置につく。
次は、白雪姫の台詞だ。
ぼくが離れたことにより、
彼女もゆっくりと起き上がった。
「………………あ、わた、し……ここ………」
白雪姫は緊張してるのか
台詞が詰まってしまっている。
声も出ないのか、あわあわとしている彼女に
小人達が心配そうに見ている。
なんとか………しないと。