第10章 11月『王子様の超越』
「前日は、他クラスの劇を見てから
行う合同練習だ。
俺達の劇の順番は最後だけど
他のクラスの劇を見て良い所を吸収したり
観客がいるから本番の練習にも
なったりするし、頑張ろうな。」
「あと、全員の衣装が完成したの。
前日だし、衣装を着て行いましょう。」
今日は前日練習。
観客は本番の半分くらいだろうか。
青いきらびやからな衣装を片手に
体育館に入ると、既に劇は始まっていた。
「……………わぁ、草薙君だ。」
「王子様役をやるって噂、本当だったんだ。」
「あんなキラキラな衣装着るんだね。
凄い。早く見たいな。」
他クラスの女子がこちらを
ちらちらと見ながら噂話をしている。
「……後で写真撮ってもらえるかな。
明日はきっと忙しいし、
今日って意外と狙い目かも!」
「あ、ずるい!私も一緒に
写真撮ってほしいのに!」
「……………………。」
聞こえてますけど。
心の中で嫌味を言って
聞こえないふりをして俯いた。
嫌だな、写真とか。
こんなキラキラな衣装だって、
王子様だって。
本当は、本当は嫌なのに。
「………………。」
首をブンブンと振った。
駄目駄目。
今日は、僕は王子様になるんだ。
王子様になって、
姫を助けて結婚するんだ。
「…、大丈夫か?」
ふと顔を上げると真田先生が
僕の隣に来ていた。
「……平気です。一応、薬飲んできたので。」
「…………そっか。
気分悪かったら、いつでも言えよ?」
「……はい。ありがとうございます。」
でも今は緊張よりも、嫌悪感の方が強い。
どちらにしても嫌な予感しかしないけど。
僕はその予感を吹き飛ばすように、
何度も自分の台詞を読み直した。