第10章 11月『王子様の超越』
「『……おお、なんて美しい姫なんだ。』」
「『王子が白雪姫にキスを落とすと、
なんと、白雪姫が目を覚ましたのです。』」
「『凄い!白雪姫が生き返った!!』」
「『…まぁ、私はどうしてここに……。』」
「『………僕と結婚してください。
共にお城で暮らしましょう。
僕だけの……プリンセス。』」
「『………はい、王子様。』」
「『こうして、白雪姫は王子様と
いつまでも幸せに過ごしました。
めでたしめでたし。』」
「………オッケー!完璧!」
「…上手くいったわね。」
「……………ふぅ。」
衣装を着ずに、ステージ練習が行われた今日。
なんとか、僕は台詞をすらすらと
言えるようにまでなれた。
「草薙、やるじゃん。
最初とは大違いだよ。」
「あとは、もう少し大きい声を出すだけね。
気持ちはこもってるから、その調子で。」
「……うん。ありがとう。頑張る。」
クラスメイトも僕が台詞を言う時だけは
少し緊張しているようで
心配そうに僕を見ている。
が、その分、良かったところや
悪かったところを教えてくれるからか
アドバイスを取り入れるうちに
僕も王子様という役に慣れてきた。
「!すごいじゃん!
俺、感動しちゃったよ……。」
「何言ってるんですか、
まだ本番じゃないのに。」
真田先生も感動しっぱなしでこの調子。
僕も、もしかしたらいけるかもしれない。
と、1人、浮かれていた。
そう、文化祭の前日までは。