第10章 11月『王子様の超越』
「……し、しぬ………はぁ…はぁ……。」
「…………どうしたの……?」
瑞希が僕をギリギリの所で
手を緩めてから、瑞希は真顔で聞いてきた。
瑞希はソファーに座ってるから、
僕はその上で向かい合って座っている形だ。
緩めたものの、僕の背中に回った手は
まだ僕を拘束中だ。
僕は息を整えながら、
瑞希にここにきた目的を話した。
「………あの…ききたい…
こと……あって…。ゲホッ……。」
「………………聞きたいこと?」
「…………はぁ、はぁ………、、うん。」
「何が……聞きたいの?」
やっと、息が整った。
唾を飲み込んで、瑞希に口を開く。
瑞希がこんなこと知ってるかどうか
分からないけど。
「…人前で……緊張しないコツ…教えて。」
「…………。」
天才の瑞希なら、分かるかも、と思ったから。
「………大勢の人を何かに見立てる、とか。」
ああ、それ、野菜に見立ててやるやつだよね。
よく聞くやつだ。
「……それ、昔やってみたけど、
全然効果なくて。他に無い?」
「……じゃあ……動物に見立てる、とか。」
「動物?」
「……全員、動物と思えばいい。
目の数は…一緒……。」
「なるほどね………。」
野菜はやったことあるけど、
動物だなんて思いつかなかった。
流石瑞希だ。すごい。
「ありがとう。僕、頑張ってみる。」
「……ん…いい子、いい子。」
瑞希は一通り僕を撫でてから
ちゃんと手を離してくれて、
僕はバカサイユを出た。
ポイントは、3つ。
台詞の意味を考えて、
王子様の気持ちになって、
観客は動物と見立てて。
「…………よし、頑張ろう。」
僕は頬をぱちんと叩く。
気合を入れ直し、
台本を開いた。