第10章 11月『王子様の超越』
「あ、いた。瑞希。」
最後についたのはバカサイユ。
瑞希はソファーに座ったまま寝ていた。
「瑞希、瑞希。起きて。」
ゆさゆさと体を揺らすものの、
全く起きる気配がない。
聞きたいことがあるのに。
起こすために隣に座って、瑞希に耳打ちする。
「……ここで寝てるって、
南先生に言っちゃうぞ。」
「……………ぐぅ……。」
…………反応無し。
なんだよ、もう。
せめてちょっとは聞いてあげなよ。
南先生、苦労してるんだから。
「補修も増やしてもらっちゃうし。」
「…………すぅ………すぅ………。」
「……もう一緒に帰ってあげない。」
「…………………ぐぅ………。」
「おうちにも遊びに行ってあげない。」
「……………すぅ………………」
「あとは…あとは………。
……真田先生のとこに行っちゃうぞ。」
「……………!」
冗談半分で言った言葉に、
瑞希が勢いよく目を開けた。
そして、僕の腕を引いて
思いきり抱きしめる。
「………それ……だめ……ゼッタイ………。」
「うっ……くるし、………ッ…。」
僕が手をバタつかせても
瑞希は一向に力を弱めてくれず、
僕は窒息寸前になるまで
瑞希の腕の中に閉じ込められていた。