第10章 11月『王子様の超越』
「失礼します。」
「…お!!!」
ClassXの扉を開けると、
兄さんがニコッと笑って近付いてくる。
ClassXは喫茶店にするために
看板などの大道具を作ってる最中だった。
「どうした?」
「…瞬、いる?」
「瞬ならあそこで翼と紅茶飲んでるぜ。」
教室の端にどかされた机の上で
瞬と翼が紅茶を飲んでいる。
珍しい。いつも翼の特製ドリンクなのに。
「ん?もサボりに来たのか?
永田、にも紅茶を。」
「かしこまりました。翼様。」
「…今日は紅茶なの?」
「ああ。珍しい茶葉のな。
イギリスのものだぞ。」
「…瞬も紅茶目当て?」
「……俺はタダで飲めるならなんでも飲む。
だが正直、俺は緑茶のが好きだ。」
「……そう。」
好きでもないのに、
タダだから、と飲むのが瞬らしい。
「……さん、どうぞ。」
「…ありがとう。」
近くの椅子を持ってきて僕も座ると、
永田さんが紅茶を1つ持ってきてくれた。
一口含むと、
ベルガモットの香りが沸き立って
深みのある味がする。
ああ、これって………
「…フォートナム・アンド・メイソン?」
「流石さん。
ご名答でございます。」
紅茶の銘柄を当てると、
永田さんがにやりと微笑んだ。
「…でも、ちょっと違う気がする。
香りが…違う。」
「フム。その通りだ。
そこの社長が俺用にと作ったものらしい。
ただのご機嫌取りのものだ。」
「………そうなんだ。」
この紅茶、凄い高いのに。
流石、真壁財閥だ。
「………好きならくれてやる。
俺はもういらんからな。永田!」
「はい、さん。
こちらです。」
「………え、ああ、ありがとう。」
大きい缶を1つ渡されて、そのまま受け取る。
これでいくらだろう。1万はするな。
「…………………。」
瞬が卑しい目でこっちを見てるけど、
欲しいのかな。
瞬のコップの紅茶、全然減ってないのに。
……翼に頼んで緑茶飲めばいいのに。