第2章 4月『沈黙の少年』
「…おい草薙!お前、学校にいるなら
授業出ろよな!」
「すみません。面倒くさかったもので。」
「面倒くさいで済ますなよ!もぉー!!」
真田先生の頭からはプンスカと
湯気が出ている。
ふくれっ面も合わせて見ると、
まるで子どものようだ。
「…とにかく、せめて次の、
…俺の授業には出ろよな。」
「何故ですか?」
「何故って…一人でも生徒が多い方が
やる気出るからに決まってんじゃん。」
「………ふーん。」
にこりと笑う顔は純粋無垢。
曇一つない青空のようだ。
「………んん………。」
「あ、斑目。お前もサボってないで、
次の授業出ろよな!」
「…ん…………、…。」
「トーゲー。」
瑞希は僕の頭に顎を乗せて先生を見る。
…半分睨みにも入ってるけど、
真田先生は気付かない。
それにしても…………
「………………ねぇ…瑞希、僕まで巻き込む気?」
「……うん。」
「どうした?草薙。」
僕が瑞希の言葉にため息をつくと、
真田先生が首を傾げる。
あ、そうか。この人、瑞希の言葉は
分からないんだった。
「あ、いや……。瑞希の通訳…聞きますか?」
「あ…そっか。お前草薙の弟だもんな。
斑目の言葉分かるんだっけ。
……斑目はなんて言ってるんだ?」
「えっと…
『悪いけど次の授業も出ない。』」
「は、はぁ?」
「『それにも出ない。
は今、僕の抱き枕だから。
一緒に寝る。
子犬はバイバイ。』」
「まっっっだらめぇ!お前って奴は!!
草薙を巻き込むなよ!」
「………ん。」
「『僕とは一緒同体。
僕が寝るならも寝る。』」
「それを言うなら一心同体!
学校に来てるんだから
授業受けろよ!」
「……………。」
「『意味無いし必要ない。
は授業受けても受けなくても
テストで学年一位。』」
「そうかもしんないけどさ!
ほら、草薙も授業受けた方が
成績も良くなるぜ?
草薙さ、去年の後半、
成績かなり落ちてただろ?
だから、出といた方が
草薙のためにもなるし…」
その言葉に、瑞希が顔を上げる。
下にいる僕は顔の表情は分からなかったが、
僕を抱きとめる腕の力が少しだけ
強くなったかと思うと、
瑞希は突然口を開いた。