第10章 11月『王子様の超越』
「………はぁ。」
書き直された台本を手に、
ため息をつく。
1人だと言えるのに、
ステージに立つ自分を想像すると
どうしても行き詰まってしまう。
「あー……、どうだ?
出来そうか?」
大道具を手伝っていた真田先生が見に来る。
手伝いつつも僕達の読み合わせは
聞こえていたはず。
……どうもこうもないよ。全く。
「やっぱり…僕には無理です。
こんなの、出来っこない。」
「まぁ、そう言わずにさ。
まだ1週間あるし。頑張ろうぜ。」
「いや、あと一週間しかないんですけど……」
この2週間、何度も家で練習したし
台詞だって本当は空で言える。
なのに、こうやってみんなと一緒に
やろうとすると、焦ってしまって
全然できない。
そしてそれに焦れば焦るほど、
噛んでしまい、上手くいかなくなる。
どうすればいいのか、
もう分からなくなっていた。
「…それなら…やった事のある人に
アドバイスもらうってのはどうだ?」
「…………アドバイス?」
「誰か…B6とか、先生とかでいるだろ。
舞台に立ってる人とか。
緊張しないコツとかあるかもしれないぞ。」
「………………なるほど。」
それは、全然思いつかなかった。
意外と良い案かもしれない。
「ありがとうございます。
じゃあ、行ってきます。」
「………おう!へへ、たまには
俺も良い事言う………って、おい!
今からか!!?」
慌てる真田先生を置いて、
僕は教室を出た。