第9章 10月『王子様の憂鬱』
「!見ろよ!ほら!
ゾウさんいるぞ!!」
「…ほんとだ。久しぶり。
…大きくなったね。」
「パォーン」
「俺達の事覚えててくれたのか!
ありがとな!」
兄さんが象に向かってブンブンと手を振ると
象も鼻を高くあげた。
僕達が今いるのは動物園。
平日の昼間の動物園はがら空きで
暇そうにしている動物達一人一人に
兄さんは挨拶していく。
「きゅう!」
「おお、うさコロも元気か!良かったな!」
触れ合いたいくらいの気持ちで
象に続き、メスのうさぎに
話しかける兄さん。
ほんと、動物が絡むと嬉しそうだ。
「…きゅ」
『そっち人は…誰?』
「コイツは俺の弟!可愛いだろ〜?」
「……可愛いとか、違うんだけど。」
「が可愛くなかったら
何が可愛いんだよ。なぁ?そう思うだろ?」
「…きゅ、」
「だよなぁ!」
「………茶化さないで。」
僕が否定してみるものの、
兄さんはうさぎに僕についての話を
聞かせている。
「……でさぁ、その時、
なんて言ったと思う?
『…ぎゅ…して………』たぜ!?
最高に可愛いだろ!?」
「…兄さん、あんまり
そういう事言わないで。恥ずかしい。」
「なんでだ?……あ、ホントの事しか
言ってねぇから安心しろって!」
「ホントの事でも言わないでってば。」
「……きゅきゅ…。」
『……あはは……。』
ほら、うさぎさんも、
ちょっと飽きてきちゃってるじゃん。
「…きゅ、きゅきゅー。」
『でも、そんな事言ってたら
2人とも恋人出来ないわよ?』
「………こい…びと?」
思わぬうさぎの発言にポカン、と口を開けた。
恋人って、恋に落ちて付き合う相手の事だよね
今のところ、恋の『こ』の字も分からないけど