第9章 10月『王子様の憂鬱』
(真田視点)
「……来ないな。」
朝、校門で幾度待っても
は学校に来なかった。
「……電話しても出ないし……。」
何度も着信を入れた携帯を仕方なく閉じる。
ぶっちゃけ言えば、学校に遅刻欠席は
当たり前の生徒だから
そんなに珍しい訳じゃない。
「でも、王子役が嫌で
休んでるとか…ないよな?」
ただ、昨日の荒治療が響いて
休んでるんじゃないかと心配なだけなのだ。
昨日はなら出来る、と無理矢理
言いくるめてしまった。
「……どけ。邪魔だ。」
「……あ、?」
後から声をかけられて振り返ると、
紅の瞳が俺を写した。
「…なんだ…真壁か。」
じゃなかった。
………いや、だったら
どけ、なんて言わないよな。うん。
「………俺で悪かったな。」
俺が気の抜けた返事をすると、
真壁は不機嫌そうに呟いた。
「…………ちなみに、は
今日は来ないぞ。It's no worth waiting.」
「待っても無駄って……。
どうして休みなんだ?」
「知るか。」
真壁はそう言って俺を押しのけると
校門を通り歩き出す。
「……知るかって……お前なぁ……。」
………休みか。
今日はクラス会議もないし、
特にの所に行く用事は無い。
心配だからって
家行くのも変だし……諦めるか。
「…………はぁ。」
ため息をつくと、
真壁が半分だけ振り返った。
「…体調が悪いわけじゃないらしい。
どうせ一も一緒だろうし、心配ない。」
「………あ、ああ。ありがと、な。」
俺が頷くと
真壁は満足そうにスタスタと去っていく。
「……ま、草薙が一緒なら大丈夫か。」
心を入れ替えるように両方の頬を軽く叩き
俺はClassAの教室に向かった。