第9章 10月『王子様の憂鬱』
「やめてッ!」
目を開けると、
いつも通りの朝だった。
部屋中目覚ましがジリリと鳴り響き、
僕は頭を殴られたように強制的に目が覚めた。
でも、僕はその事に対して
何も思っていなかった。
ああ、夢でよかったと思うくらいに
目覚ましに感謝している自分がいる。
「……………嫌な、夢…。」
体を起こすと、全身、汗でベタベタで
息は上がってしまっていた。
その癖、体は何故か冷たく震えている。
この感情は………
「こ………わい………?」
「………。」
1人で黙って制服を着替える。
こういう時、一人暮らしというものは
どこか心寂しい。
「…………朝ごはん……いいや。」
なんとなく寒気がして、
食事もままならず家の外に出る。
兄さんに、早く会いたかった。
「…?待ってたのか?」
「………………兄さん。」
少しして、兄さんが自転車に乗って
家の前に来る。
朝から水も飲んでいないからか
僕の声は少し掠れていた。
「……どうしたんだ?何か…変だぞ。」
「…………………。」
兄さんが僕の異変に気付き、
家の敷地内に自転車を停める。
「………ぎゅ……して……。」
兄さんが僕に近づいて
ゆっくりと手を回す。
「………。」
そして優しく抱きしめてくれて
…僕の意識が遠のいた。