第9章 10月『王子様の憂鬱』
これは………
IQテストを受けた後の…僕と…両親の会話…。
たしかこの頃は小学生で………。
研究所に行ったんだけど、
実験は上手くいかなくて、
ナシになったんだったな……。
『ねぇ、知ってる?
草薙さんとこの子の事。』
『草薙さん?…一君の事?』
『違う違う。下の子の方よ。
この前、アメリカの研究施設に
行ったらしいの。
何かあったのかしら。』
『ああ、あのいつも一君の後ろに
隠れてる子?
もしかして、ちょっと
おかしい子なんじゃないの。
もう小学生なのに、無口で
ほとんど喋れないなんてやっぱり変よ。
もしかしたら、
夜な夜な奇行に走ってるとか?』
『いやだ!怖いじゃないの。
ウチの子に、あの子とは遊ばないように
言っておこうかしら………。』
…………研究施設での実験の後………。
学校から帰る途中で聞いた
おばさん達の立ち話。
『あ、君!おはよう!!』
「……………………。」
『おい、やめとけよ。ソイツに挨拶するの。』
『どうして?
ぼく、君とは仲良しだよ。』
『やめといた方がいいよ。
お母さんがあの子とは遊ぶなって
言ってるんだ。』
『なんで?』
『ちょっと、変らしい。
夜中、家で暴れてるって噂だぜ。』
『そうなの?…知らなかった。』
「………………………。」
そんな事、してないのに。
なんでみんな…………嘘を信じるの?
『……なんとか言えよチビ!!』
どうして…みんな……
『やめとけよ、コイツの兄貴は
後輩の足を折った野郎だぜ。
コイツだってそうに決まってるじゃん。』
みんな嘘を信じるの……………
『そうだったな!この暴力男!!』
どうして……………………!!
『君は………普通の人間じゃない。』
『一般人と暮らすと、
周りの人を不幸にする……。』
『君は……人に疎まれる存在なんだ。』
『ほら………周りを見てご覧。』
『誰もが……
君を睨んでいるのが分かるはずだ。』
ーーーーーーッ!!
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