第9章 10月『王子様の憂鬱』
「今日だって、何かあったんだろう?」
「………別に、ないよ。」
「なら、髪留めはどうした。」
「………あ、…えっと…それは…。」
思わず口ごもった。
実は、暴漢に絡まれて、その時とれた、
なんて言えない。
そんな事言ったら、きっと心配される。
もごもごと誤魔化すと、
顎を優しく持ち上げられ、目線を合わせられた
「……………。」
「………?」
「…俺の事は気にするな。
いつでも…呼んでもらって構わない。」
瞬がふわりと微笑む。
「……だから、あまり我慢するな。」
「………………ありがとう。」
僕が頷くと、瞬はまた僕の頭を撫でた。