第9章 10月『王子様の憂鬱』
「………そう、だよね……ごめん。」
そう言って電話を切ろうとすると、
七瀬先輩が僕の手から携帯を奪った。
「…草薙。七瀬だ。
何をしているか知らんが今すぐ来い。
お前の弟の事だ。
中途半端な気持ちでいるなら
来なくていい。
バカサイユで待ってる。じゃあな。」
ぶちり、と携帯の通話を切ってから
僕に携帯を渡してきた。
中途半端な気持ちって、
今まさに、僕がそんな気持ちだ。
僕は別にいいのに、七瀬先輩が
許してくれないんだし。
「僕の事なんか、
そんな重要な事じゃ……。」
「重要だからそう伝えた。
お前もいい加減自覚しろ。
自分が置かれている状況が
おかしい事くらい。」
「…………えっと…はい、すみません。」
今日何度目か分からない謝罪をして
外に出るため僕は上着を羽織った。