第9章 10月『王子様の憂鬱』
いや、知り合いは…、坂下は
兄さんの事尊敬して引っ付いているけど
那智は僕の事を可愛いだなんて
言っている。
高校男子に可愛い、だなんて。
「馬鹿じゃないの?」
僕がむすりと頬を膨らませると
那智は首を傾げた。
「え?最初から言ってるじゃん。
結構可愛い顔してるって。
聞いてなかった?」
「……………。」
あれは、本気で言ってたのか。
……いや、きっと髪留めが
取れたからそう思っているだけだ。
僕は、可愛くないもん。絶対に。
「あ、無視しないでよ。先輩!
せーんぱいってば!」
僕の怒りを他所に、
那智はまたケラケラと笑った。