第9章 10月『王子様の憂鬱』
「人見知り………かぁ。」
ぼんやりと歩いていると、
スタジオに行く途中で誰かにぶつかった。
「………わっ」
「あぁん?なんだよテメェ……」
誰かにぶつかってしまい、顔を上げる。
なんか、いかにもヤバそうな人に
遭遇してしまった。
その人は僕をギロリと睨んだ。
スキンヘッドに耳にはピアスが
何個かついている。
「このクソガキ…。
ぶつかったなら謝るのが礼儀だろうがコラ!」
僕よりも身長が大きい彼は
僕の胸ぐらを掴む。
体重の軽い僕は簡単に持ち上がり、
地につま先立ちする形になる。
「…………………ッ…。」
相手にしちゃ駄目だ。
無視してねって、瑞希が言ってたもん。
………でも、
兄さんもこの時間は流石にストリートには
いないだろうし、
キヨがいつもいるバスケコートからは
ちょっと離れている。
瞬も今頃スタジオで
ベースを弾いている時間だ。
…………誰にも近くにいそうもないな。
どうしよう。
「オイ………聞いてんのかガキ!!」
「…………ぐッ!」
今度は髪の毛を引っ張られて激痛が走る。
結んでいたゴムが千切れて下に落ちた。
相手の手を掴み解こうとするが、
掴むのが精一杯だった。
「…………ッ、」
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
やっぱり瞬に迎えに来てもらえば良かった。
そんな事を考えていると
後から腑抜けた声がした。
「その子誰?中学生?」
「あ、那智。この餓鬼が
ぶつかって来たんだよ。」
「ふぅん………。」
突然手が離されて、
地面に尻餅をついて着地した。
「……………………、。」
お尻打った。痛い。あざになってるかも。
声を出さないようにしてお尻をさすると、
顎を持ち上げられる。
見上げると、青年が僕を見ていた。
茶髪に白い肌、蒼い目。
そして、整った顔立ち。
女子が見たら、きゃあ、なんて
声を上げそうな風貌だ。
……ま、僕としては
美形の1つや2つ、見慣れてるから。
なんとも思わないけど。
青年は僕を見て、にやりと笑った。