第9章 10月『王子様の憂鬱』
「ここが…瑞希の家?」
「……うん。」
放課後。
1度バカサイユに戻って、
兄さんに瑞希の家に行くと伝えてから
2人で学校を出た。
高校から歩いて少しすると
瑞希の家につく。
「………どうぞ。」
「お邪魔します。」
瑞希が玄関の扉を開けて、
僕も続いて中に入る。
あれ、女の人の靴だ。
「…姉さんの…靴。」
「そうなんだ。」
瑞希のお姉さんの隣に靴を並べると
奥から誰かが顔を出した。
「瑞希、おかえり。………あら、お友達?」
「ん……。」
こくり、と瑞希が頷く所を見ると
瑞希のお姉さんのようだ。
瑞希と同じ髪の色と切れ長の目が
どことなく似ている。
「初めまして、草薙です。」
「……あの瑞希が友達を連れてくるなんて。
あ…草薙君、ゆっくりしていってね。」
「はい、お邪魔します。」
お姉さんは心底驚いているようで
目をぱちくりさせながら僕を見た。
「………、こっち。」
それを気にしていないのか、
瑞希は僕を部屋に案内する。
僕は最後にお姉さんに会釈をして
瑞希の後を追った。
「…………ここ……部屋。」
「へぇ、結構広いね。」
「トゲトゲッ」
瑞希らしい、真白の部屋に案内される。
瑞希は白いベットに腰を下ろし
トゲーはテーブルの上に丸くなった。
その脇にある本棚を見ると、
科学雑誌が並んでいる。
「これ、読んでいい?」
「…うん。」
瑞希は頷いて、僕に本を渡してきた。
受け取って中を開けると
全て英語で書かれていた。
……瑞希、いつもこれ読んでるのかな。
瑞希が腰掛けたベットの隣に座り、
科学雑誌を開く。
「……………ふぅん…。」
雑誌は論文が沢山記載されているもので
それぞれの各分野の論文が書いてある。
パラパラとページを捲ると、
ドックイヤーされているページが
何個かある事に気付いた。
「……………。」
Space……Rocket………
ドックイヤーされている論文は
宇宙の論文ばかりだ。
「瑞希、宇宙に興味あるの?」
「………うん。」