第9章 10月『王子様の憂鬱』
「……瑞希ってさ。」
「………何…?」
「自分が人嫌いの原因って、
考えた事ある?」
「…………………。」
「……僕は、性格の問題だと
思ってたんだけど。
………違うのかなぁ。」
「………………。」
瑞希は僕の話を黙って聞いていた。
それまで喋っていた口は固く閉じている。
……この話は、したくなかったかな。
「………深い意味じゃないよ。ごめん。」
トゲーが、僕と瑞希が似ているというのは
そういう所だと思う。
人嫌いで、無口で仏頂面。
嫌な事を言われると、黙ってしまう。
だからこそ、きっとその原因も
同じかもしれない、と思ったんだけど………。
「………………。」
「………何?」
「………今日…学校終わったら………
…僕の家……来ない…?」
瑞希がぼそりと呟く。
そういえば、瑞希の家には
行ったことなかった。
でも、急にどうして………?
瑞希の顔を見上げると真剣そのもので。
眠そうじゃない、
しっかり見開いた瞳が僕を突き刺している。
なんだか、覚悟を決めた…………そんな目だ。
「………いいよ。」
その目を逸らすことが出来ず
そう言うと、
瑞希もコクリと頷いて、
また僕の手を引いた。