第9章 10月『王子様の憂鬱』
「……………?」
「あ、瑞希。」
「トゲトゲッ!」
「あ、トゲーも。」
「風門寺が……喜んでた。
に……化粧してあげたって。」
「……お陰で大変だった。
化粧、落とせてないし。」
「……ん。行こう。
まだ…いるかも。」
「うん。」
瑞希と一緒に帰りを歩き始めて
もうすぐ2ヶ月が経つ。
2人で歩く時だけだが、
瑞希も何故か自分で喋る事が多くなってきた。
以前は瑞希語で『ん』だけで
会話していたのに。
………瑞希も、僕みたいに喋ろうと
努力しているのだろうか。
「……手……。」
瑞希が僕の手を取る。
最近、瑞希は僕と手を繋いで歩くのが
お気に入りらしい。
前みたいに抱き抱えられるよりは
楽でいいけど、
相変わらず周りの目は痛い。
僕らを見て黄色い悲鳴を上げる者、
ヒソヒソと話をする者、
ゲッ、と嫌そうな顔をする者…
様々である。