第9章 10月『王子様の憂鬱』
「…………………………。」
「あの、えっと、出来心っていうか、
申し訳ないっていうか。」
「………………………。」
「………そうだよな。
寝てる間に勝手に着替えさせられてたら、
怒るよな。ごめん。」
「…………………………。」
「でもすげー似合ってたし、王子役は
満場一致でに決まっちゃったし。」
「……………………。」
「し、白雪姫の王子様って
最後に出てくるだけだろ?
台詞もほとんど無いし、
にも出来るって!!」
「……………………………はぁ?」
「……ゴ……ゴメンナサイ………。」
僕がクラス会議中寝ている間に、
悟郎と真田先生2人で
僕を王子役の衣装に無理矢理
着替えさせたらしい。
とにかく派手な衣装を脱ぎ捨てた僕は
クラス会議後に申し訳なさそうに
来た真田先生を睨みつけた。
「………。」
「ゴメンって……ホント。
王子役がいなくて本当に困ってたから。
ついつい、魔が差して。」
「………………でも、そのせいで
僕は王子役なんでしょ?
どうしてくれるんですか。」
王子役は着替えさせられた僕を見た
クラスメイトにより決定されてしまった。
僕は今年、大勢の前でステージに
上がらなきゃいけない。
正直言って、こんなに嫌なものはない。
「台詞、できるだけ少なくして
もらうからさ!頼むよ!
やってくれって!!」
「……やったとしても、出来るわけないです。
体育祭の事、忘れたんですか?」
グラウンドで走る事すら無理だった僕に
ステージに立つなんて事、
出来るわけない。
必死にお願いする真田先生から目を逸らすと
真田先生が顔を上げ、俺と目を合わせてきた。