第2章 4月『沈黙の少年』
だが、去年は散々な目にあっていた。
上靴は捨てられ、筆箱はトイレに流され、
ノートや教科書は落書きだらけにされていた
そうだ。
はそれを誰にも言っていなかった。
あの一ですら、瞬に見つけられるまで
知らなかった事実だ。
何故かと問い詰めると、
『言う必要ないと思った』なんて
馬鹿げた事をぬかしていたのを思い出す。
は自分が我慢して、
騒動が収まるのを
ずっと待っていたらしい。
しかし嫌がらせは
エスカレートしていくばかりだった。
だから俺達が、結託してそれを止めさせた。
今ではB6がの後ろ盾となり、
に手を出すと
B6の手で粛清が下されると
噂されている。
…その噂のおかげか、
はもう嫌がらせは
されてないと言っている。
永田からもそんな連絡は受けていない。
「……また、なのか?
……だったらちゃんと俺達に相談しろ、
じゃないと…
お前が……壊れてしまいそうだ。」
まだうなされている様子の
に言う。
勿論、その言葉が
眠っているに
届くわけがない。
は一以上に気難しい性格だ。
ポーカーフェイスの下には
たくさん不満があるのに、
ひたすらにそれを溜め込んでしまう。
それが自分の事であると尚更だ。
「…………ぅ、あ……翼……?」
澪の目がゆっくり開く。
その瞬間、の目から
ポロポロと涙が落ちた。
「…、あれ?なんで……。」
「……。」
の涙と汗を手で拭い、
を抱き締めた。
「…つば、さ?」
なんとなく、一が
に執着する気持ちも
わかる気がする。
俺が護ってやらなきゃいけないと、
そう思ってしまう。
「んん、翼……」
ほら、こうやって無理矢理抱き締めても、
背中に手を回し、俺の服に
しがみついてきた。
無自覚かもしれないが、煽られた気分だ。