第8章 9月『Open Campus』
「今日は仔羊のステーキ赤ワイン煮込み
でございます。
どうぞお召し上がりください。」
山田さんがニコリと笑い、
B6の皆で箸…いや、フォークをとった。
「お……美味しい………っ!!」
ステーキを1つ口に入れると
舌でほわりと溶けて消えてしまう。
赤ワインはそんなステーキと
絡み合って絶妙なハーモニーを奏でていく!
「うぅ……こんなの太っちゃうわ…。
でも美味しいし…止まらないし…。」
上に乗っているのはトリュフと
フォアグラだろう。
これも最高に美味しい。
こんなのを10代の頃から
食べているなんて考えられないわ。
「、これ、美味いから食えよ。」
「……いいよ。僕、マリネ食べるから。」
「そう言うなよ。ほら、あーん。」
「あー………んむむ………美味しい。」
「だろ~!!?美味いよな!!」
草薙兄弟は今日も今日とて仲が良い。
一君が君の口にステーキを
運んでいる。
一君は嬉しそうに笑い、
君はまんざらでもない様子で
もぐもぐとステーキを咀嚼している。
「………………ん……。」
「トゲトゲ!!」
それを横目で見ながら、
瑞希君はトゲーと一緒に食事を楽しんでいた。
君と瑞希君の席は
隣なのに、二人だけでいる時のように
べったりすることも無い。
二人だけでいると、
瑞希君はすぐ君にもたれたり
抱きついたり抱き上げたりするのに。
なんだか不思議な光景だ。
「…………ねぇ、瞬君。」
「なんだ?」
「……君って、
一君と瑞希君のどちらが仲が良いのかしら。」
「……………知るか。」
瞬君は私を馬鹿にしたような顔をして、
また食事を再開し始めた。
瑞希君はB6…というか、
一君といる時は、君と
関わろうとはしない…。
でも、君が一人でいる時は
わざわざクラスまで迎えにいく。
しかも、最近になって、急に。
「………………どうしてかしら。
ねぇ、瞬君。聞いてる?」
「…アンタこそ俺の話を聞いてるのか?
さっきから知らんと言ってるのに
ブツブツと……。」
瞬君に睨まれながらも
私はずっと上の空だった。