第8章 9月『Open Campus』
「あ、わ、私達……もう教室戻るね!」
「…そ、そうね。
じゃあね先生!また今度、絶対教えてよ!!」
女子生徒達は慌てて廊下を去っていき、
女子生徒が廊下の角を曲がって
見えなくなった所で、君は
私に顔を戻した。
「…………………。」
「あ、あの、君?」
「…………はい。」
君は先程の厳しい顔から一点、
いつものポーカーフェイスに戻る。
私が声をかけたのにも関わらず、
返事をしてから、スタスタと歩き始めた。
私は慌てて、君の後を追う。
「…ッ待って!」
もしかして、今、私を庇ってくれたのかな。
「………………………。」
君はその言葉にふわりと振り返る。
茶色の髪が舞って、蒼い瞳が私を写す。
渡り廊下は残暑の日光が差して
君を照らした。
普段美形は見慣れているはずなのに。
……君も、やっぱりB6ね。
「…その、ありがとう。」
思わずその言葉が出てしまった。
ハッと口を抑えると、
君の無表情が
少しだけ柔らかくなった。
「…………はぁ?何がですか?」
言葉は辛辣だけど、
表情はどことなく優しい。
さっきの女子生徒に見せた顔とは
ちょっとだけ違う。
きっと、これは自惚れじゃないわよね。