第8章 9月『Open Campus』
(真田視点)
夏休み明けの9月。
残暑が厳しいこの季節。
俺は1つの大きい壁に直面していた。
「……!今帰るとこか?
一緒に下駄箱まで……。」
「めっ、子犬、ハウス。」
「……ごめんなさい。
今日も瑞希がいるので。失礼します。」
「…………あ…そっか。
えっと…また、明日な。」
そう、斑目という大きな人間の壁に。
「はぁ……今日も断られた……。」
終業式から、2週間ほど。
俺は1度もとまともに話せていない
毎度の事ながら斑目が現れ、
俺が話す前にをかっさらっていく。
別に必ず話しかけていたわけじゃないけど
2週間も話さなかったのは初めてで、
大学の事も、進路の事も何も話せていない。
少ししたら、進路の二者面談
やらなきゃいけないのに。
「………はぁあ…。」
一人寂しく職員室に入る。
もういいや。お茶でも飲んで落ち着こう。
引き出しから、お昼ご飯用に用意してある
ペットボトルのお茶を出した。
「…真田先生。」
お茶を喉に通すと、
二階堂先輩が話しかけてきた。
「ごくん、………あ、先輩?
えっと、今日は何かありましたっけ。」
お茶を飲み込んで、二階堂先輩に
返事をする。
あれ?今日は職員会議だったか?
確か、来週だったと思ったんだけどな。
それとも、何かあったっけ。
先輩が俺に声をかける理由に
色々考えを巡らせて見るものの、
何も思い浮かばない。
俺の考えを他所に先輩の眉間にシワが寄った。
「……いえ、最近、あまりに君が
落ち込んでいるので、
少々気になっただけですよ。」
「………あれ?そうでした?」
「…フゥ。
周りに落ち込んでいる様子を見せながら、
自覚症状がないとは…。」
二階堂先輩がため息をつく。
さらに、先輩の意見を裏付けるように
俺のデスクの近くを通った
鳳先生が苦笑いをした。
「そうだね。まるで、
想い人に振られてしまった……
この所、そんなような雰囲気だったよ。」
俺から目を逸らして鳳先生が苦笑いをした。