第8章 9月『Open Campus』
紙を貰ったものの、大学なんて
漠然としていて、どの学部を
見に行けばいいのか全く分からなかった。
まぁいいや、とバカサイユの
テーブルに置いておいたら、
悟郎が落書きに使っちゃって、
そのままその紙をあげちゃったんだったな。
「…大学の事がよく、分からなかったので。」
「…………お前なぁ。分からないからこそ
オープンキャンパスに行くんじゃないのか?」
「…………ああ、成程。」
「……………って今気付いてどうすんだよ!
国公立のオープンキャンパスは
ほとんど終わっちゃったぞ!」
僕が納得して頷くと、
真田先生は頬を膨らます。
そんなに大事なのか、
その、オープンキャンパス…とやら、は。
「…………はぁ、そうですか。
ちなみに僕は国公立?には
行けるんですか?」
「行けるに決まってんだろ!
……ぶっちゃけ、このままいけば
何処でも受かるよ…多分。」
「流石、聖帝きっての天才だね。
。」
「……からかわないで。
別に、行きたいところなんて、無いし。」
坂下がニヤついて言い、
クラスの目が僕に集中する。
………成績や進路の事になると、
周りの目がとても痛い。
成績が良いという事も、
嬉しい事ばかりではないのだ。
「………とにかく、何処でもいいから
行ってこいよ、オープンキャンパス。
1個でいいから。
私立だったら、まだ秋にやる所もあるし、
大学祭でもいいから。」
「…………うーん………。」
ただの課題とはいえ、
確かに僕は大学の事を何も知らない。
そういえば、兄さん達は
行ったことあるのかな。
…なさそうだけど、
後で一応聞いてみよう。
「……行かなくていい……。
…めんどくさい…から…。」
突然上から声がする。
思わず見上げると、
真っ白なものに顔を覆われた。
なんだか、ふわふわした匂いがする。
……これ、もしかして。
「………瑞希?」
「ん……正解…。
……流石…………。
…よしよし。」
瑞希は僕を見て頭を撫でる。
いつの間にうちのクラスに来たんだろう。
もしかして今日もまた
B6の誰かに呼ばれたのかな。