第2章 4月『沈黙の少年』
『……もしもし、七瀬だ。』
「もしもし、瞬?今、大丈夫?」
『ああ。今新聞配達のバイトが
終わったところだ。問題ない。』
流石、瞬。バイト三昧で凄いなぁ。
「そっか。えっと、
昨日電話出れなくてごめんね。
何か、緊急だった?」
『いや、大したことじゃない。
昨日バイトの帰りに仙道と会ったんだが、
お前を1人バカサイユに残して
帰ったと聞いたから、1人で帰ったのではと
心配だっただけだ。』
「そっか。それなら平気。
今、翼と温泉旅行に行ってるから。」
『温泉旅行?…まぁ、誰かと一緒にいるなら
大丈夫そうだな。』
「うん。大丈夫だよ。……あ、そうだ。
翼まだ寝てるから、行くの遅くなると思う。
兄さんにはメールしてあるけど。」
『分かった。俺は昼までに
来てもらえればいい。じゃあな。』
「うん。またね。」
ピッと通話を切り、携帯を閉じる。
「ん……。」
頭上で翼が唸る声がする。
やっぱり煩かったかな。
「ごめんね、翼。………おやすみ。」
どうせ、抜け出せないのなら
僕ももう一眠りしようと
翼と向き合うように寝返りをうち、
翼の胸板に擦り寄って目を閉じた。