第2章 4月『沈黙の少年』
「……………ん。」
カーテンの隙間から入る朝日に目が覚める。
ゆっくり起き上がると、隣で寝ている翼が
唸った。
「……ん、…永田………まだ、起こすな…。」
「……………。」
翼は寝ぼけているらしい。
携帯を開くと、7:00だ。
ここから朝食を食べて、ヘリを飛ばして
1時間目に間に合うには
今起きてもギリギリ間に合うか否かである。
「翼、起きて。学校間に合わないよ。」
「………たかが…抱き枕…。
主の眠りを細切れるつもりか……」
えっと、主の眠りを妨げるって
言いたいのかな、多分。
「抱き枕なら…ちゃんと寝ていろ……!」
「わっ」
ベッドに引き寄せられた上、
思い切り腕でホールドされて
抜け出せなくなる。
「翼、離して。ねぇ、翼ってば。」
「煩い!…もう少し寝させろと
言っているだろう!!」
「……はぁ…分かった。おやすみ、翼。」
「フン……それでいい。」
僕を腕の中に閉じ込めて
またウトウトする翼に
もう学校には間に合わないなと腹を括る。
手もとにあるのは携帯のみだ。
「とりあえず、兄さんに翼の事メールして…
ついでに坂下にも送っとこう。」
メールを送り終わると、
昨夜、たくさん不在着信が
あったことに気付く。
「……?誰かな。」
開いてみると、全部瞬だった。
もしかして緊急の電話だったかな。
僕を抱きしめながら寝ている翼に
心の中で謝り、電話をかける。