第7章 8月『Side story with B6』
「担任。車を用意させたから
さっさと乗り込んで帰れ。」
「……そうね。もう日が暮れるもの。
車、用意してくれてありがとう、翼君。」
南先生がふわりと笑うと、
翼がプイッと顔を逸らした。
「が用意した方がいいと
言ったから用意させただけだ。」
……ちゃんと先生の事、心配してるくせに、
いっつも僕のせいにするんだよね。
素直じゃないな、翼は。
「んー、でも、ここからだったら
デンシャで帰れるよ!」
悟郎がにゃはっと言う効果音付きで笑う。
確かに、常に徒歩か電車移動の悟郎なら
ここからでも帰れそうだ。
「…………運賃は560円くらいか?
この車だと、ガソリン代の方が高くつくな。」
瞬がパチパチと電卓を弾く。
流石主夫だ。計算が早い。
「…………電車で行けるか行けないか、
お金がかかるかかからないかよりも
南先生の場合、
おそらく家にたどり着けないだろうから、
僕が翼に送っていってってお願いしたの。」
僕がそう言うと、南先生が頬を膨らます。
「……ちょっと!それどういう意味よ!」
「…そのままの意味ですよ。
先生、車無しで本当に家まで
ちゃんと帰れますか?」
「……かっ………帰れるわよ!!」
強がって僕に胸を張る南先生。
最近やっと高等部の校舎を覚えた人が
なにを言うか。
「だったら、ここから先生の家が
どの方向にあるか、分かります?」
「………そ、それは、
その……あっちの方よ、多分…。」
僕が意地悪くそう聞くと、
南先生は悩みながら南の方を指差す。
「先生………そっちは東京湾ですが、
先生は海の上に住んでるんですか?」
「…なっ!ちょっと間違えただけよ!!」
うろたえる南先生に笑いがこみ上げる。
まぁ、催眠スプレーで無理矢理
連れてこさせられて、
この質問は酷だったかな。