第7章 8月『Side story with B6』
「……兄さんから、
先生の匂いがしたので。」
「………へ!!?」
何それ、匂いで判別したの!?
話を聞いたとかじゃなくて!?
「…………聞かなくたって、分かります。」
私が驚くと君はぼそりと呟いた。
「……………僕、兄さんの事は何でも
分かってるつもりですから。」
君はナスカの地上絵に目を細める。
「…でも、分かってしまうからこそ、
僕には何も出来ない。」
「…………僕じゃ、駄目なんです。
兄さんのそばにいる事しか出来ない、
兄さんを……救えるのは…僕じゃない……。」
その言葉に君は
視線を落とす。
辛く泣き入りそうな声は
あの時の……
ストリートファイトをしている時の一君と
似ていた。
感情を必死に押し殺しているような
小さな声。
兄弟で仲が良いからこその大きな溝が
そこにはあった。
きっと君も、辛いんだ。
「…………………君………。」
「………先生、兄さんの事、
よろしくお願いします。」
「………………………………。」
私に向き合い返して、
私の瞳を見つめる君の瞳は
真剣そのものだった。