第7章 8月『Side story with B6』
君は
手元の砂を弄って
小さな道を作っている。
それは何本もあって、
まるで茶畑のように規則正しく並んでいた。
よく見ると周りには色んな道が交差していて、
それは私の足元にまで伸びている。
しかし、それがあのナスカの地上絵とは
到底思えそうにない。
「…………先生、見えないんだったら
あそこのパラソルの椅子の上に
立ってみてください。」
君が私の気持ちを
汲み取ったように言う。
「わ…分かったわ。」
君に言われた通り、
近くにあるパラソルの近くに
ある椅子の元へ行く。
だんだんと絵の全貌が見えてきた。
「…………これ……。」
君の書いていた茶畑のような線は
すべて繋がっていて、
大きな鳥をあらわしていた。
……世界史の教科書で見た事がある。
「………すごいわ………!!」
言われた通りに椅子の上に立つと
まさに教科書通りの
鳥が写し出された。
………と、同時に、その左翼を
横切るように私の大きな足跡も浮かび上がった
左翼を思い切り押しつぶした私の足跡は
完成されている右翼に反して
酷い出来になってしまっていた。
「…………私、君の傑作を
思い切り踏んでいたのね…
…ごめんなさい…。」
「………。」
私の発言を聞いているのかいないのか
君は私の隣に来て、
足跡付きのナスカの地上絵を見に来た。
「………………南先生。」
「…………な、何かしら?」
また怒らせてしまっただろうか。
名前を呼ばれて君の方を向くと
ぱちりと視線がぶつかった。
君の瞳が
ぐらりと揺れているのが分かった。
「……この前、兄さんの家に
行きませんでしたか?」
「……え、ええ。行ったわよ。」
何かと思えば、藪から棒に
一君の話だった。
それにしても、よく分かったわね。
私が一君の家に行っただなんて。