第7章 8月『Side story with B6』
「…………ねぇ、翼君。」
「なんだ、担任。」
「…君、
あそこで何してるの?」
スーツのままプールに入ってしまい、
翼君に水着を用意して貰って着替えてから
数時間。
プールの端っこの浜辺にいる
君はプールに入ろうとせず、
しゃがんで何かをしているようだ。
「ああ……あれか…。」
翼君が君を見た後、
時計を見る。
「………そろそろ2時間経つな。
永田。に新しい飲み物を
渡しておけ。」
「かしこまりました。翼様。」
永田さんが翼君に頭を下げて裏に入っていく。
その姿を目で追っていると、
翼君が思い出したように
私の質問の返事をした。
「ああ、担任。
気になるなら見に行ってみればいい。
もう機嫌も直っているだろうしな。」
そう言って翼君はまた皆の元へ
戻って行く。
私は、1人でプールから出て
君の元へ向かった。
「………………えっと、君?」
真壁財閥スケールの馬鹿みたいに
大きいプールの中の隅っこに
君はしゃがみこんでいた。
「………………。」
私が君の後から声をかけると
君は半分だけ振り向いて、
また砂場に顔を向けた。
「………君、えっと、
さっきは、その……ごめんね?」
「…僕こそ、拗ねちゃってごめんなさい。」
こちらを振り向かず呟く
君はやっぱり素直で
いい子だと思う。
少なくとも、
天邪鬼がひねくれ返ったような
清春君よりはずっと素直だ。
「……何してるの?」
君と同じ目線になろうと、
君の隣にしゃがむ。
君は手元に
シャベルを持っていた。
「…………。」
君は私の方を
ちらりと見てから、ボソリと呟く。
「………ナスカの地上絵です。」
「な、ナスカ……って、あの?」
「はい。」