第6章 8月『和解?』
「…………、どうだ。」
「いくつかリズムの修正があるけど、
それ以外は良いと思う。」
「そうか。」
スコアを見ながら新曲を聞いた。
僕の予想以上に皆練習してきたみたいで
ほぼ完璧だ。
流石ヴィスコンティ。
「じゃあ、えっと…
ギターの18番目の2小節目。
ちょっとだけリズムが……。」
「18の……んー……どこだ?」
「……弾いてみてください。言うので。」
順番にリズムや音の修正をしていく。
ギター、ベース、ボーカル、
キーボード、ドラム。
それぞれ少しずつ間違いや
遅れたところはあるけど、
すぐにスコアに書き込み、
分かるまで僕に何度も聞いてくる。
それに僕は何度も説明して
弾けるようになるまで教える。
それがヴィスコンティで、
僕が出来ることだ。
一員、とまではいかないけど、
僕の力で瞬の音楽が良くなるなら
使ってほしいと思う。
僕としても、曲が1つ仕上がるのを見るのは
とても楽しい。
「…………えっと、最後にボーカルの……。」
「ん?俺か。」
「……はい。44段目。ソロで。
少し早かったので、キーボードを聞いて、
終わってから入ってください。」
「了解っと。」
「………僕が気になったとこはこれだけです。」
スコアから目を離して言う。
みんな特に異論は無いらしい。
顔をあげると、翔太さんと目が合った。
「それにしても指示が的確!
君、音楽やってたのか?」
僕が頷くと、翔太さんが不思議そうに聞く。
「………はい。少しだけ。」
「何やってたんだ?」
「……………えっと、」
「……翔太。雑談はいらん。
もう1回通すぞ。」
瞬の掛け声で全員また準備を始める。
こうやって、何度も合わせて、
時には途中で止めてまた調整をする。
細かい作業だが、大切なことだ。
……作曲して良かったな。
最初は僕のピアノの演奏だけだったのに、
今は皆の楽器が1つになった音楽になっていく
新曲がスタートし、僕はまた、
スコアに目を移した。