第2章 4月『沈黙の少年』
「…フン、来たか。」
乗っていたのは翼と永田さんだけだった。
「ほかのみんなは?」
と僕が聞くと、翼は眉間にシワを寄せる。
「……たまには二人だけでもいいだろう。
俺とでは気に食わんのか。」
「…そういう意味じゃない。」
どうやら若干地雷を踏んだらしい。
今日は二人で出かける気分だったようだ。
いつもより静かなヘリの中に乗り込み、
翼の隣に座ると僕から顔を背ける。
「ねぇ……どこ行くの?」
「……………どこだっていい。永田、出せ。」
「かしこまりました、翼様。」
ああ、もうダメだ。不機嫌モードだ。
僕はシートベルトをつけて、
翼の機嫌が治るタイミングまで
大人しくしていることにした。
ヘリは夕焼けに照らされた街の上を飛ぶ。
翼はそんな街を頬を膨らませながら
窓から眺めていた。