第5章 7月『ピアノとBBQ』
「…だとしても、です。
何か理由があるはずだって聞かなくって…。」
「坊っちゃまと一坊っちゃまは
お二人共大変仲が良いので、
一坊っちゃまの事は
坊っちゃまが
1番分かっておいででした。
ですから、坊っちゃまの
ご意見は最もでした。謝罪はしましたが、
私も…未だに信じてはおりません。」
「………そう、なんですか。」
「私はここで働いているだけですが、
坊っちゃまは
学校で事件の話になると、
その時の担任の先生やクラスメイトと
かなり言い合いになったそうでして。」
「だから、坊っちゃまは……。」
「君は……なんですか?」
「……ここだけの話にしてくださいますか?」
「……嫌がらせ?」
「はい。坊っちゃまは
そのような素振りは
1つも見せませんでした。
ですが、ある日奥様から電話がありまして。
坊っちゃまに生活費を入れている口座のお金が
どんどん減っていると連絡がありまして。」
「確かに最近ゴミの量が増えたと思い、
裏に置いてあるポリバケツを確認すると、
中から汚れた上靴や筆箱が沢山入っていて。」
「おそらく、嫌がらせされてしまったの
でしょう。どれも大変汚れておりました。
それを買い換えていたため貯金が
減っていたのです。」
「………………そんな!その時の担任は
何をしてたんですか!!」
そんなにやられてたってこと、
担任が気付かないはずが無いじゃないか。
「それが、担任の先生は
傍観をしていただけのようでして。
むしろ、担任の先生も
坊っちゃまの事を
よく思っていなかったようです。」
「……そんな、担任まで君を……。」
酷い。酷すぎる。
その時のの気持ちを考えるだけで、
胸が痛くなった。
「でも、秋が終わりかけた頃、
忽然とそのような事が減ったのでございます。
上靴や筆箱を買うこともなくなり、
元の生活に戻りました。」
「あ、もしかして
その頃って、1-Aの担任が急に
自主退職した時期じゃ…。」
裏では真壁が仕組んだって噂だけど、
もしかして、B6絡みか?