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弟バカと兄バカ【VitaminX 原作沿い 】

第5章 7月『ピアノとBBQ』





「……………はぁ」


言い返せなかった。

本当は、に伝えたい事、
たくさんあったのに
あんなに辛そうなを見たら
何も言えなくなってしまった。


小屋の扉はガチャリと閉められて、
もう今日は会えそうにない。


「…………結局、渡せなかったな…。」


成績表と模試を持ったままため息をつく。



「あら、お客様でした?」

庭からガサガサと音がして
おばさんが出てくる。
庭掃除をしていたのか、竹箒を持っている。


「……ごめんなさいね、気付かずに。」


「ああ、いえ…大丈夫です。」



「あ、私、草薙家で家政婦をさせて
頂いているものです。…失礼ですが、
先生でいらっしゃいますか?」


家政婦さんが俺の持っている模試を見る。
裏面だとはいえ、模試って事くらいは
分かってしまう。


「……ああ、はい。
草薙君の担任の真田です。
……すみません、勝手に入ってしまって。」


頭を下げると、家政婦さんは笑った。



「…いえいえ!坊っちゃまの
先生でしたか。
いつも坊っちゃまが
お世話になっております。」


ぼ、坊っちゃま……。
真壁ならともかく、
それ以外でその言葉を聞くことになるとは
思わなかった。



「……ですが、生憎坊っちゃまは
小屋に篭っておりますから……。
少々お待ちいただけますか?」

「あ、いえ、いいんです。
さっき……会ったので。」


不法侵入しました、とは
言えず、苦笑いして答えると、
家政婦さんは口に手を当てて驚いた。


「おやまぁ……小屋に
お入りになられたのですか?」


「ええ、まぁ、はい。」


「……すぐに坊っちゃまに
追い出されたのでは?」


「………………そ、その通りです。」


自分の行動を全て言い当てられる。
なんだか情けなくなって俯くと、
家政婦さんはまぁまぁ、と俺を宥めた。


「…坊っちゃまは昔から、
演奏中の邪魔を大変嫌われますから。
今度からは私にお申し付けくださいね。」



「……分かりました。」

家政婦さんの言葉を受け止める。
それにしても、昔からって……。


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