第5章 7月『ピアノとBBQ』
BBQの後に温泉に入って、
家に帰ってきたのは夜も更けた後だった。
自分の部屋に入り、ふと携帯を見ると、
たくさんの着信が入っている。
全部、真田先生だった。
携帯の着信履歴を見ていると、電話が鳴った。
………また…先生、だ。
「……………………。」
今更、何を話す事があるんだ。
もういいでしょ、僕の事なんか。
携帯をほおり投げてそのまま
ベッドに潜り込んだ。
翌朝。いや、お昼時に僕は大寝坊で起きた。
………今日から夏休みだ。
「……………ふわぁ、あ。」
着替えて1階に降りると、
家政婦さんが掃除をしていた。
「坊っちゃま。
おはようございます。」
「……………はよ。」
「2階のお部屋もお掃除しても
よろしいですか?」
「どうぞ。」
「……かしこまりました。」
家政婦さんは2階に上がっていく。
リビングはクーラーがついていて涼しかった。
「………お茶飲もっと。」
朝ご飯を軽く食べて、家の外に出る。
今日から何の予定もない。
………こんな日は、暇潰しにでも
音楽に浸るとするか。
僕は庭にある白い壁で出来た小屋に入った。
「今日は何か弾こうかな。」
本棚から、明るい有名な曲を
いくつかチョイスする。
それを譜面台に広げる。
弾いたことのある楽譜はほとんど
覚えている。
でも、譜面に置くと、
その曲を弾こう、という気分になる。
今日は創作はいいや。
僕の視線は楽譜を少し見て、ピアノに戻る。
最初はパッフェルベルのカノンから………