第5章 7月『ピアノとBBQ』
「否定しないってことは
やっぱりそうじゃないか!
坂下からお前が先生に取り入ろうと
してる事は聞いてるんだよ!!」
「……………坂下の馬鹿…。」
ああ、坂下はそういう奴だったと思い出す。
やっぱり奴は……小悪魔だ。
「どうせ来年の進路のツテでも作ろうと
狙ってんだろ!!」
「…………………。」
僕がまた黙ったのをいい事に、
男子生徒は僕を嘲笑った。
「…返す言葉もないようだな。
こんな生徒をもって真田先生もさぞ
嫌だろうな。」
「……………そんな、」
「クラス会議もまともに出ないし、
毎日声掛けなきゃ授業サボるし、
体育祭も勝手に早退して迷惑かけるし……。
先生もお前のせいで
迷惑してるに決まってる!」
「お前みたいな生徒、いらないんだよ!
さっさと聖帝から出ていけ!!」
「……………………っ。」
僕は心の中で必死にその言葉を拒否した。
そんな話、聞きたくなかった。
先生が僕を迷惑に思っている?
僕の事なんていらないって思ってる?
……………そんなの、嘘だ。
積み上げられた信用がガラガラと
音を立てて落ちる。
僕の心はまた空っぽになった。