第4章 6月『緊張』
そして、開けた瞬間、
一瞬で騒がしいバカサイユは
沈黙が流れる。
「「「「……………………。」」」」
南先生の弁当は隅から隅まで真っ黒だ。
ダークマターのような具材が
大量に転がっている。
「………………………。」
ある意味予想通り、だけど。
「………な、な、な、なんだこれはー!!?」
翼が声を上げ、
他の皆も息を吹き返した。
「ふぇええ〜なにこれー!
真っ黒だよぉ〜!!」
「………先生、すげぇなこれ。
一瞬で食欲持ってかれたぜ。」
「…………食べ物を粗末にしない俺も
…これは流石に、食えんっ!」
「ゲェッ…ナァんで米まで
真っ黒なんだヨ!」
「……トゲーが………怖がってる……。」
まぁ、初見ではそうなるよね…。
僕は貰ったことあるから
なんとも思わないけど。
「…………………。」
僕は具材をひとつ箸で掴む。
半分に割ると、中まで真っ黒だ。
「………なっ!?
失礼ね。そこまで言う事ないじゃない!
ね?君!!
私にしては上手く出来てるわよね?」
ぱくり、とその黒い塊を半分口に含む。
…………ん、これ人参だ。
中まで味が染みてて…なんというか、普通だ。
見た目に反して。
「………上手くはないですが…
いつも通りというか…。
相変わらず凄いですね。」
もぐもぐと口に人参を含みながら話すと
ぎゃっ、と悲鳴が周りからあがる。
「レイ!何食ってんだ!死ぬダロ!!」
キヨが騒ぎ、全員の目が僕に向く。
「、めっ!
ペッしなさい、ペッ!!」
「永田!キューキューシャを呼べ!
今すぐだ!!」
「!早まるな!!」
「もう!何よみんなして、失礼ね!! 」
皆も騒ぎ出し、
先生がふくれっ面になる。
僕はごくりと人参を飲み込んだ。
「………大丈夫だよ。
見た目だけだから、南先生の料理は。」
僕がもうひとつ具材を掴もうとすると
箸が兄さんに取り上げられた。
「………、もうやめとけって。な?」
「………………うん。」
兄さんの心配そうな目に負けて
食べるのを諦める。