第4章 6月『緊張』
「あ、いや…そういう訳じゃなくて…その
ご両親かなと思ったからさ、あはは。」
「うちの両親なら、
遠くに引っ越してしまって残念ながら
会えませんよ。
………知らなかったんですか?」
が氷のように冷たい目で俺を見る。
……そういえば鳳さんが
そんなような事言ってたな………。
「…両親に会いたかったなら残念でしたね。
失礼します。」
「あ!待って!ま、まだ話があるんだ。
…その、のご両親じゃなくて、
に。」
扉を閉めようとする澪を必死に止める。
澪の動きがピタリと止まった。
「………僕に?」
「そ、そうだ。に、だ。」
「……………。」
が閉じかけていた扉を
開けてくれた。
少しだけ玄関の奥見える。
綺麗なフローリングが広がっていた。
高そうだなぁと心の隅で思う。
「…少しだけですよ。」
「あ、…ありがと、な。」
の許可を得てホッとする。
……どうしてこう、俺はいつも
の下手に出ているんだろう…。
「あ、……そうだ。。
今日の金メダルと…賞状。」
鞄からの参加賞を渡す。
の眉間のシワが寄る。
「………はぁ、どうも。」
後で捨てられる未来が
待っていそうな2つの玩具を、
はそのまま玄関の
靴箱の上に置いた。
「それで……さ。
今日の事なんだけど」
俺が話を切り出す。
なんだか言いにくくて、
自然と目が泳いでしまう。
……しっかりしろ、俺。
「その……坂下に聞いたんだよ。
が……緊張しやすいって事。」
俺が途切れ途切れにそう伝えると、
が悪態をつく。
「……あの馬鹿下……。」
は坂下の事馬鹿なんて言うけど、
俺は坂下のお陰でこの事を知れた。
俺は話を続けた。
「…俺、そんな事も知らずに
にやらせようとして……それに、
俺、に競技に
出てもらう事ばっか考えてて、
の体調に気付けなかった。
………本当にごめん。」