第2章 4月『沈黙の少年』
唐揚げを飲み込むと、
ジュースの入ったグラスを持て余す翼が
俺に声をかけた。
「そういえば、
の担任は誰だったんだ?」
「あぁ、真田先生だよ。」
そう言うと、悟郎がキラキラくりくりした目を
丸くする。
「あ、マサちゃんなの?良かったじゃん。」
「良かったの?まぁ、誰でもいいけど。」
「そりゃ良かったよ!マサちゃん、
童顔だし、カワイイ物好きだし。
ゴロちゃんはポペラ好き!」
「ふーん……」
僕もジュースを飲もうと手に取る。
オレンジの甘酸っぱさが口に広がり、
喉を潤す。
「…分かってると思うが、
何かあったらちゃんと報告するようにな。」
瞬が釘をさすように言う。
瞬はとっても心配症で、
僕がちゃんとClassAで生活していられるかが
気になるようだ。
それは他のB6も同じだ。
去年、兄さんの暴力事件の後、
クラスメイトから
少し嫌がらせをされていた時期があり
瞬はその第一発見者だった。
僕としては、そんなこと言う必要はない
と思っていたから言わなかっただけだった。
でも、周りのB6には
それが衝撃的だったようで、
僕が日常的に嫌がらせをされている事を
ばらすと、B6のみんなが
憤怒していたのを覚えている。
…その後、キヨがしこたま
僕のクラスメイトに悪戯を仕掛けまくり、
翼が僕の担任をクビにするという仕返しで
僕への嫌がらせはピタリと止んだ。
………まぁ、そんなわけで、
瞬を筆頭に、僕の事は皆気にしているらしい。
『何かあったら言え』というのは
もはや瞬の口癖である。
「分かったよ、瞬。」
僕がそういうと、瞬も納得したように頷いた。