第2章 王国の王子
ノインの頭に疑問が浮かぶ…彼は、それを口にして訊ねた。
「陛下の命令…それが何なのか、聞いてもいいですか?」
「…それは…」
クルツは言い淀む。
「蛮族の王の討伐」
「一人で行かれるのですよね」
代わりに答えたのは、テートとモートルだった。
それを聞いて、ノインよりクルツが驚きをあらわにする。
何故二人が知っているのか…!
「ノインが帰ってくる少し前、村に回状が届いて…大人達が噂してたの」
テートの言葉を聞いて、王子は一つ溜息を吐いた。
「そこまでするか…」
宰相は、王子が“一人である”事を強調することで、王子に仲間を作らせないつもりなのだ。
「一人って…何があったんですか⁉︎」
再度ノインに訊かれ、クルツはここまでの経緯を話した。
自分を嫌う宰相の謀略により、一人で蛮族の王を討ち取れと王に命令された…と。
「なんと辛辣な…‼︎」
モートルは、憤慨したように顔を赤くしている。
「宰相って、そんな酷い人だったんだ」
「うん」
テートもノインも、宰相に怒りが湧く。
自分の私欲の為に、王子様を危険に晒すなんて…命令の内容は勿論、回状の事だって酷過ぎる。
王子様が一人で居る事を、蛮族に知らせるようなものじゃないか。
「クルツ殿下、本当に一人で行かれるおつもりですか⁉︎」
「ああ」
低い声で、クルツは答える。
「回状が出てるなら、国民は皆、俺が“一人で倒してくれる”って期待するだろう。もう…誰もついて来ることはない」
頭に血が上り、怒りのまま叫ぶように、ノインは王子に向かってこう言ってた。
「──僕が行きます!!!」