第3章 使者の娘
「謁見をお許し下さった事、感謝申し上げます」
ノインに連れられ部屋に現れたシーカは、先ずクルツの前に跪いた。
「何故、俺がここに居ると分かった」
「一度、騎乗の殿下を見た事がありました。その時と同じ馬が、この村の馬屋に居たことと…馬の目がこの家を見つめていたこと」
シーカはチラッとノインを見やり、
「正直者の家主の反応を見て、確信しました」
「うっ」
「…気にするな」
馬のことに気付かなかった俺も悪かった、と付け加える。
クルツが観察の為に見つめると、シーカは目を逸らす事なく、真っ直ぐに見つめ返した。
目的地は蛮族の集落であるから、方角は分かったとしても…王都からここまではそれなりに距離がある。
行動力、観察眼、度胸…どれを取っても、ただの街娘とは思えない。
「お前は何者だ?普段は何をしてる」
「食堂で働いていました。…父は、王宮に務める騎士でした」
そこまで言った所で、シーカは初めて目を逸らした。
「父は…先日、蛮族の王の手により…惨殺されました」
「‼︎」
「まさか…」
王子の言葉を待たずに、シーカは答える。
「私は、蛮族の元に送られ殺された使者の──娘です」