第2章 王国の王子
「僕が、殿下と一緒に行きます‼︎」
ノインが言い放った言葉に、クルツは一瞬思考が止まってしまうほど驚いた。
蛮族に襲われていた奴が、何を言ってるんだ…普段の彼ならそう返したことだろう。
今そう思えないのは…
「僕は、これでも剣士です。村で一番強いってわけじゃないけど、戦えます!」
ノインの目が、あまりに真剣なものに見えたからだ。
テートとモートルも、ノインに続いた。
「私も行きます!」
「自分も、お供させて下さい‼︎」
王子は更に驚いたが、すぐに冷静さを取り戻して答える。
「…有り難いが、ダメだ。若いお前らを巻き込むわけにはいかない」
事情を話したのは間違いだった…と、王子は心中で反省した。少しでも宰相の悪評を広めてやろうとした邪心に、バチが当たったのかもしれない。
王子に拒否されても…モートルは、王子に向かって一歩踏み込んだ。
「恐れながら、殿下は我々と同い年であります!殿下が行かれるなら、我々も!」
「俺は命令を受けた」
テートは、杖を握り締めながら言った。
「一人でなんて危な過ぎます!」
「だとしても、俺は…」
ノインは、再び力強く言い放った。
「お願いします‼︎僕らを、殿下と一緒に行かせて下さい‼︎」
三人の真剣な眼差しに、クルツは気圧される。
「…お前らは分かってるのか、蛮族の危険性を…」
三人は同時に頷いて答える。
「…俺に…付いて来てくれるのか…?」
クルツは、自身の声が小さくなっていくのを情けなく思った。
それでも、三人は…
「はい‼︎」
一つの迷いも示さなかった。