第2章 王国の王子
テートとモートルは、ノインの横を通ってクルツに歩み寄った。
「ノインを助けてくれて、ありがとう!」
「いや…」
真っ直ぐに礼を言うテートに、クルツは返事に困った…日に何度も感謝される事に慣れていないからだ。
「俺からも礼を…」
更に一歩歩み寄ったモートルは、クルツの顔を見て目を見開いた。
「あ、貴方様は…‼︎何故ここに⁉︎」
どうやらモートルは、クルツがだれだか知っているらしい。
「モートル、この人の事知ってるの?」
テートが聞けば、モートルは答えるより先に、クルツに向かって跪いた。
「この方は、国王陛下の第一子…クルツ王子殿下だ‼︎」
驚愕に満ちた二人の声が、見事に重る。
(つ、つまり…この国の第一王子様⁉︎)
ノインの脳裏に、これまでの自分と彼との会話等が思い起こされる。
「──ごめんなさい‼︎」
開口して先ず口にしたのは、謝罪の言葉だった。
自国の王子様を「騎士様」と呼んでしまった事と、自分の為に王子様を蛮族の危険に晒してしまった事に対する、謝罪であった。
しかし、当のクルツに気にしてる様子は無く…
「別に気にしなくていい。…俺は、そんなに偉いもんじゃねえ」
そう言って、自嘲めいた笑みを浮かべていた。