第2章 王国の王子
王都を発ったその日のうちに蛮族に遭遇したのは、クルツにとって想定外の事だった。
偶々襲われていた村人…ノインを助けた事も、そのお陰で休む場所を得た事も。
ノインの案内で彼の住む村に到着し、クルツは先ず馬屋に自身の愛馬を入れた。
水と餌を分けてくれたノインに、クルツは礼を言った。
「あの…騎士様は、何処かに行く所だったんですか?」
「…ああ。王の命令でな」
少し考えたが、クルツは正直に答えた。
「だが、俺は騎士じゃない」
「え?」
ノインは目を瞬かせる。
(騎士じゃないのに王様から命令を?)
失礼ですが貴方は誰なんですか…ノインがそう訊こうとした時、その肩に誰かの手が置かれた。
「おかえり、ノイン」
「帰っていたのだな」
ノインが振り向くと、そこには二人の男女が居た。
「テート、モートル!ただいま」
魔法使いの少女・テートと、騎士の少年・モートル…どちらもノインの友人である。
ノインが友の顔を見て安堵していると、テートの目はその後ろのクルツに向いた。
「その人誰?」
自分の事を聞かれてると気付き、愛馬に餌を与え終えたクルツも、ノイン達を振り向く。
「帰る途中に蛮族に襲われた所を、その人に助けられたんだ」
「!襲われた⁉︎」
「大丈夫なのか⁉︎」
モートルにガッと両肩を掴まれ、ノインは若干身を引いた。
「だ、大丈夫。怪我する前に助けられたから」