第2章 王国の王子
──ノインは焦っていた。
「待てゴラァ‼︎」
「待ちませんー‼︎」
まさか今、蛮族と遭遇するなんて!
蛮族に追われ必至に逃げている、村人の少年ノインは、自身の腰に手を当てて嘆く。
普段ならば、そこには剣が携えられている。
それさえあれば、自分は剣士…戦えもするし、心も強くいられる、この蛮族にも勝てるかもしれない。
ただ、現在愛剣は村の鍛冶屋に預けてしまっている。
森に果物を取りに行った帰り道、よりによって剣が無いこの時に、彼は蛮族に遭遇してしまったのだ。
ノインは考える。
このまま逃げるにしても、一体どこへ?
家に帰れば、自分の村が襲われてしまう。
森に入れば、動物や木々が傷付けられる。
自分を追ってくる蛮族が一人だけなのが、唯一の救いだった…気休め程度の救いだが。
彼は元来、臆病者…身に宿る正義感と一本の剣、その両方があって初めて、彼は一人の剣士となれるのだ。
(ああどうしよう⁉︎…神様助けて下さい!)
ノインの目尻に涙が溜まった時、彼の耳にある音が届いた。
それは、馬蹄の音。
「そこの蛮族‼︎国民を襲うんじゃねえ‼︎」
助く声。
「あぁ⁉︎」
─ガキンッ─
そして、剣と剣のぶつかり合う音。
ノインは、茂みの中に飛び込んで身を隠した。
呼吸を整えながら、茂みから顔を出す。
「!あ…」
ザシュッ
「ぐぁ‼︎」
彼が姿を捉えたと同時に…蛮族の男は、馬上の人から胸を斬られた。
蛮族の男の体が倒れて、そのうち動かなくなる。
それを見てノインは、やっと恐怖から解放された。
「た、助かった…」